上野昭代さん~働く方々のやる気を”成形”する~

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上野 昭代 (うえの・あきよ)

講師になるまでのお仕事: メーカー勤務、パン教室の講師。

今のお仕事: 株式会社アップライトラーニング代表取締役。企業コンサルティング、研修、就職支援セミナーなどに従事。

HP: http://www.uprightlearning.com/company/index.html

 


 

新人研修も大切だけれど新人を育てる先輩・上司にも変わって欲しいという思いで研修をしている上野昭代さんにお話しを伺いました。

 

- 本日は宜しくお願いいたします。

上野:どこからお話すればいいのでしょうか(笑)。宜しくお願いいたします。

 

講師業のスタートはパン教室

- 初めから講師を志されていたのでしょうか?

上野:仕事を始めた時は講師全く考えておらず、大学卒業後はメーカーで所謂OLをしておりました。9ほど年勤めて、寿退社をしたのです。今はあまり寿退社というのはないですかね(笑)。

仕事は続けたいという思いはあったのですが、子供が小さいうちは一緒にいてあげたいというのもあり、その時は辞めることにしました。時代もあったのでしょうけれど。

 

- その後、再就職を考えられたのですか?

上野:何か仕事をしたいというのはずっと思っていました。

子供が幼稚園に入って少し昼間の時間が空くようになった時に、近くに住んでいた友人から「駅前にパン教室ができたから一緒にいかない?」と声を掛けられたので、通うことにしたのです。

パン教室も商売なので、基礎コースが終わると中級コースではこれを作りますといったように、次々に案内をされます。食いしん坊なもので、これも作ってみたい、あれも作ってみたいとやっているうちにその教室で師範まで取ってしまいました(笑)。

 

- すごいですね。パン作りを教えられる資格ということですか?

上野:師範を取ると、クラスを一つ持たないかというお話をいただきました。子供にアトピーがあったので、添加物の入っていないものを手作りできたらいいなと思って始めたのですが、パン教室くらいならできるかなと思ってお話を受けました。

講師という意味ではそこがスタートです。

 

「伝える」ことは難しい

 

- 初めはパン教室の先生だったのですね。

上野:はい。それで講師をやり始めたら、一回のクラスで1人か2人は必ず説明と違うことをする人がいました。こういう風に成形してください、と言っても違う形になるのです。人に教える、伝えるのって難しいなと思いました。これは勉強した方がいいのかなと。

そこで何かそういうレッスンをしている所はないかと探し、NHKの放送技術研究所でアナウンサーのOBが伝え方や朗読の講座を開催しているのを見つけました。そこに2年間通っていたのですが、研修会社というものがあるというのをそこで初めて知りました。

 

- それで研修会社に興味を持ったのですか。

上野:研修の仕事もちょっといいなと思っていたところ、ちょうど新聞の求人欄に研修会社の募集が載っていたのです。応募するとたまたま採用され、営業や研修テキストの制作、講師の見習いなどをしながら勉強しました。その会社に就職したのが今から15年ほど前です。

 

見習いから起業へ

 

- 起業を意識されたのはいつ頃なのですか?

上野:実は、研修会社で働いてから4,5年経った時に会社が無くなってしまったのです。社長の健康面での不安もあったりして、閉じることになりました。

研修の仕事は好きだし続けたい、どうしようかなと思って他の会社も探したのですが、なかなか募集している所が見つかりませんでした。そこで自分で会社をやろうと思い立ったのです。無謀にも(笑)。自分でやった方が自分に合ったスタイルで自分が好きなように研修ができると考えました。こういう仕事は事務所がなくてもできるし、社員がいなくてもできます。それもあって決意したのだと思います。

ただ、やっていく中でやはり独りではできないなと感じました。

 

- それはどういったところで感じたのでしょうか。

上野:インターンシップの学生さんが何年かいてくれたのですが、その間に若い感性からインスピレーションを受けることもたくさんありました。後はPCができなかったので、学生さんから色々と教えて貰いました(笑)。

その彼が大学を卒業して就職した先で研修を受けたのですが、その時の研修の講師がある研修会社の社長さんで、「上野さんを紹介しよう」と思ったらしいです。そこで紹介された会社さんの企画した研修に登壇させていただいたり、現在のお付き合いに繋がっています。どのような仕事でもそうですが、人との繋がり、ご縁というものはものすごく大切だと感じています。

 

人材育成の実態

 

- 長年研修をされていると思うのですが、業界によって人材育成の悩みは違うものなのでしょうか?

上野:会社を立ち上げた頃は、業界によって求めているものが違うなと思っていました。ですが、今はどの業界でも悩んでいるベースは同じだと感じています。どこの業界でもどの会社でもおっしゃるのは、コミュニケーションです。一昔前であれば、研究者は研究さえしていればいい、技術者は開発だけしていればいいという時代もあったのでしょうけれど、今はどの職種にもコミュニケーションが必須です。現在は製薬会社などでも開発者が営業と同行して説明するなどの機会も増えているようですし、何より社員同士の業務上でのコミュニケーションを重要視する傾向が強いです。コーチングや物の伝え方を教えて欲しいという依頼がよくあります。

 

- 10年前と今とでは受講生にも違いがありますか?

上野:一番違いを感じるのは新入社員ですね。

10年前の新入社員は、場の雰囲気を察することができる人が多かったです。状況判断ができるというか、上司の様子を見て話し掛けるタイミングを計ったりできる人です。今はそれができない人が増えました。もちろん、中にはしっかりできている人もいます。ですが、1から全部教えないとできない、先輩がやっているのを見て真似ることや、やり方を覚えるということをしない若手が多いです。

 

- それは何故だと思われますか?

上野:家庭環境、学校環境の違いなのでしょうか。昔に比べ兄弟の少ない子が増えています。家でも学校でも手をかけて育てて貰っている、「何でもやって貰える」ことが身についてしまっている子が多いですね。

 

- 社会人経験が長くなれば改善される事なのでしょうか?

上野:成長のスピードとしてはゆっくりだと思います。ただ、受け入れた企業は教育、研修をしっかりしていかないと変わらない。企業側も受け入れ態勢を整えて、先輩・上司が今まで以上にしっかりと見ていかなくてはいけません。

今あるトレーニングジムで人材育成面での常駐のコンサルティングを行っているのですが、そこの新入社員は何を頼んでも全て中途半端で提出してきます。本人は完璧にできたというのですが、少し説明をしてから「これをこのまま使えると思う?」と聞くと「ちょっと、無理ですね。」と答える。それがとても不思議だったのですが、何回も面談を重ねるうちに、学生時代はずっと「これくらいでいいだろう」とい所で済ませていたということに気が付きました。例えば、試験でも赤点取らなければいいや、大学もそこまで頑張らなくても行ける範囲でいいや、というような感じです。

 

年々回答時間が遅くなっているビジネスゲーム

 

- 企業側の受け入れ態勢まで気を配らないといけないのは大変ですね。

上野:そうですよね。ですが、特に中小企業では採用というものが非常に大変です。せっかく採用したのに辞められてしまうのはもったいない。そうなると、新入社員への研修も必要だし、受け入れる側へのコーチングなどの研修も必要になってきます。

 

- そこで上野さんの研修が、新入社員や受け入れ側のコーチングなどに繋がるのですね。

上野:はい。私の研修はその時の受講者の様子に合わせたものにしています。一方的な講義形式ではなく、様々な質問を投げかけてみてどういった伝え方をしたら理解して貰えるかを判断しています。同じ方向性で進んでいこうとしなければならないので、カリキュラムの流れに沿わなくてもその都度対応します。

例えば、ある企業さんの新人研修で毎年同じビジネスゲームをしています。グループに分かれて各グループ内の全員が持っている情報を総合して、疑似会社の企業構成などを推察するといったものなのですが、この回答時間が年々遅くなっています。全体の時間は毎年同じなので、グループワークに裂く時間によって他の時間を調整しなければなりません。

 

- それは先ほどの状況を察することができない新入社員が増えていることと重なりますね。

上野:はい。全体が見えていないというか、他の人が話しているのを聞いていないのだと思います。ですが、その中でも、学生時代に一生懸命何かに打ち込んだ経験のある人は強いです。部活をやっていて、部内での揉め事を解決したことがあるというような人は問題解決能力が周りより高いです。

 

楽しく働ける環境作りが理想

 

- 人材育成は今まで以上にどの企業でも大切になってきますね。

上野:私は最初に入った会社というのはとても重要だと思います。先ほどお話したトレーニングジムの新入社員も社会人として一人前になって欲しい。そうでないと、いつまでも仕事がきちんとできなくて嫌になって転職してしまうかもしれません。その転職はキャリアアップのための転職ではなく、その転職先もできなくて辞める、の繰り返しになると思うのです。

人材育成は結果が見えにくいものなので、研修などに予算を割くのが難しい部分ではあるのですが、やっている企業とやっていない企業では数年先に全く違ってくると思います。上司・先輩がしっかりとヒアリングをしてどこが問題なのかを考えることができる環境、学びの場を作ることが大切です。20年働いている人と、これから働く人とでは環境も全く違いますし。

 

- 最後に、今後の研修について聞かせてください。

上野:先ほどお話したトレーニングジムで初めて常駐のコンサルティングというものをやったのですが、私がやりたかったのはこれだと思っています。企業に深く関わる、長い時間関わると、会社の本当の問題点が見えてきます。やりがいもありますし、会社全体を巻き込んで環境作りをしていくことがでるので効果の見え方が違います。社会人が楽しく働ける環境作りができる研修をしていくのが理想です。

 

- 一日の大半が仕事をしていますからね。

上野:研修やコンサルティングをした会社や社員さんたちが変わってくるのを見るのがこの仕事の醍醐味です。

 

- ありがとうございました。

上野:こちらこそありがとうございました。

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