池上慎一さん~文系はエンジニアに向いている~

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池上 慎一 (いけがみ・しんいち)

講師になるまでのお仕事: エンジニアとして数多くのプロジェクトに従事。

今のお仕事:株式会社インフィニット・フィールド取締役。現役のエンジニアとして受託開発をする傍ら、IT講師として従事。

 


 

理系の職業と思われがちなプログラミングは、実は文系出身者も向いているという池上慎一さんにお話しを伺いました。

 

― 本日は宜しくお願いいたします。

池上:宜しくお願いいたします。

 

C#やVB.NETを中心に研修

― 早速ですが、どのような分野の研修をされているのか教えてください。

池上:メインはC#やVB.NETなどの.NET系のプログラミングの研修です。

 

― 講師をしたいというのは昔から考えていらっしゃったのですか?

池上:そうではなかったのです。弊社が中途の未経験を採用することになった時に、3ヶ月で育てられるように研修の仕組みを考えて欲しいと、代表から依頼があったのが始まりです。本当は中途で経験者を採用したかったのですが、なかなか条件が折り合わず、難しくて…。それであれば、未経験者を採用して育てようという話になりました。

 

― 仕組みを一から考えるのは難しそうですね。

池上:はい。実際に出来上がるまでに2年ほどかかりました(笑)。

私自身、当時はお客様先に常駐してエンジニアをしていました。その現場の近くに書店があったので、ほぼ毎日通ってプログラミングの本を片端から立ち読みしていました。それを使って社員にレクチャーをしてフィードバックを貰うというのを繰り返し、問題集を作成していったのが始めの頃です。

 

― 学校卒業後はずっとエンジニアを?

池上:そうです。大学も情報系の大学を卒業しておりまして、就職先もIT企業でした。

 

― 講師になったきっかけは会社の依頼だったのですね。

池上:そうですね、2006年だったと思うので9年ほどやっております。

 

― 自社の新入社員、中途採用向けの講師をメインでやられているということですか?

池上:最初は採用した人間を育てるところからスタートしました。中途、新卒ともに未経験での入社が多く、自社の社員にだけを教えていたのですが、パートナー企業さんからも預かって欲しいという話が出始め、徐々に講師の仕事が増えていったという感じです。

 

― 今は講師がメインのお仕事なのでしょうか?

池上:いえ。今もメインはエンジニアです。請負の案件を担当していることが多いです。開発をしながら、自社の社員研修の講師や依頼があった時に外部講師をしています。

 

「当たり前」が通じない講師としての苦労

 

― 講師のお仕事で楽しいところはどこですか?

池上:やはり、教えた成果が出た時が一番ですね。実際に教えた社員が現場で褒められると嬉しいです。教えた甲斐があったなと。

 

― 反対に苦労されたことはあるのでしょうか?

池上:初めは教えるのが上手くなくて、説明をしても伝わらないということが良くありました。自社の研修をしていたので、エンジニアではない役員が一緒に聞いていることもあって、よくけちょんけちょんにされていました(笑)。社員にもわかりづらいと言われて。

その時にたくさん苦情をいただいて、何も知らない人に教えるにはどうしたらいいのかをすごく考えたのが、今に生きているのだと思います。今は未経験の方にも「わかりやすくて良かったです」と言っていただけるので、あの時たくさん言って貰ってよかったなと思っています。

 

― やはり初めてプログラミング言語に触れる人にとっては難しいですよね。

池上:私はもともと情報系の大学を出ているので、ある程度はコンピュータ用語などの基礎知識がありました。それで、当たり前に知っていると思って話していたことが、「そういうのは普通の人は知らない」と言われて改めて気が付きました。

 

エンジニア不足のIT業界

 

― 今、依頼をされる企業さんは未経験の方への教育に困っている所が多いのでしょうか。

池上:私のところに依頼が来るのは中小規模の会社さんが多いのですが、教育カリキュラムが自前で用意できないというのとC#で研修を実施している会社さんが少ないということで問い合わせがあります。

それに最近は、未経験の方を採用される割合が増えてきていると思います。弊社の場合は経験者採用を諦めて(笑)、10年ほど前から未経験の方を取ってゼロから教えるという方法を取っているのでノウハウもしっかりあります。他の企業さんだとそのノウハウがないので依頼をするという所が多いのだと思います。

 

― 未経験者が必要だということはエンジニアが不足しているということですか。

池上:業界全体で言われていますよね。未経験歓迎のエンジニアの求人がすごく増えていると感じます。

 

― それだけプロジェクトが増えているということでしょうか?

池上:これは業界的にまずかった所かなと個人的には思っているのですが、採用に関してもプロジェクトに関しても経験者が欲しいというのが、どうしてもあります。特にリーマンショックの後くらいはその傾向が強かったと思います。なので、エンジニアが育っていないのですよ。

 

― できる人たちは年齢も上がっていきますからね。

池上:そうなのです。経験者でプロジェクトをどうにか回していたところが、どんどんプロジェクトは増えていくしエンジニアの年齢層も上がっていく。引退された方もいらっしゃると思いますし、管理職になって現場に出なくなった方もいらっしゃいます。それで人手が足りなくなっているのだと。未経験もコンスタントに受け入れようという態勢が業界全体にあれば、今の状況も変わっていたのではないかと思います。

 

― 今は未経験の求人が本当に多いですよね。

池上:採らざるを得ないのです。エンジニアは脂がのって体力的にも技術的にもいい感じに仕事ができるのは20代後半~30代くらいです。忙しくなってもある程度耐えられるという、一番需要のある層が足りていない。厳しいですね。

 

― 解決策はやはり未経験者をきちんと育てるということでしょうか。

池上:そうですね。これから4、5年くらい経てば、今入ってきている人たちがそれなりにできるようになっているはずなので、状況は変わってくるのではないかと思います。ですが、現状はまだまだ人手が足りていません。

 

プログラミング言語は英会話方式で覚える

 

― その未経験の方を育てるために心がけていることはありますか?

池上:一つは、先ほど言った全く知らない人でも解るような説明をすることです。

もう一つは、繰り返し練習させるということを意識しています。この業界は理系なイメージが強いと思うのですが、私はどちらかというと文系なのではないかと思っています。もちろん、細かいところを突き詰めていくと理系の要素はたくさんあるのですが、プログラミングはベースが言語なので文系の勉強方法になるのです。

 

― 英語を覚えるような?

池上:そうそう。繰り返し練習しているとニュアンスがつかめてきます。何でそうなっているのかを例えば、This is a Pen. はこれはペンですという表現ですとだけ覚えてもらって、Thisが主語で、isが述語のような構成は教えません。This is a Pen. 以外にもThis is a Book.など似たような文章を繰り返して覚えて、Penの部分だけ変更すればいいんだなぁと。そのあとで、細かい文法を覚えるとそういう理由だったのか、と理解が深まります。プログラムの場合最低限覚える必要のある文法は少ないので、ニュアンスをつかんで、ある程度できるようになってから詳しいことを説明します。

個人差を見極めて、この子は初めから答えを教えてた方がいいな、こっちは答えを教えるよりはヒントを出して何回か試した方が理解できるのではないか、というように個々に合わせます。

 

― 未経験だと本当に丁寧にやらないと3カ月で現場に出るのは厳しいですよね。

池上:まず用語が解らない人がいますし、プログラミングに必要な考え方自体が足りていない人が多いです。

 

― オブジェクト指向とは、といったような所からですか?

池上:そうなのですが、そこを初めに教えてしまうと全く解らなくなってしまうのです(笑)。

プログラミングの研修だとそういう概念から入る講師が多いと思うのですが、私はそこを全く無視します。どちらかと言うと、英会話スクールでとりあえず話せるようにする、みたいな。

 

― 文法などは後付で、ということですか(笑)。

池上:そうです(笑)。それもあって、短い間で「作る」ということはできるようになります。後から、こういう理由でこうやって作られているのだということを説明した方がスムースに解って貰えます。反対にしてしまうと、顔に「?」が浮かんで、それだけでプログラミングに対する壁になってしまいます。

 

「教えられる」エンジニアへ

 

― 今後の目標はエンジニアをより多く育てることですか?

池上:エンジニアもですが、講師を育てたいです。弊社の場合は、「人に教える」ということも研修に組み込んでいます。そうすることで、実際にプロジェクトに入った時に後から入ってきた人たちに教えることができるのです。

その中で、講師をやってみたいという人間が出てくればいいなと。

 

― その講師の方にもお話を伺えることを楽しみにしています。ありがとうございました。

池上:こちらこそありがとうございました。

 

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