岩丸 哲哉さん~事務職のプロを育てたい~

授業風景

 

岩丸 哲哉 (いわまる・てつや)

講師になるまでのお仕事: 2000年対応に向けてCobolエンジニアを経験後、総務経理法務のバックオフィス全般の業務に従事。

今のお仕事: 岩丸総合法務事務所を立ち上げ、社会保険労務士・行政書士として数多くの企業の労務規定などを手掛ける。また、職業訓練校で会計、人事労務、ビジネス法務の講座に登壇し、資格取得のための講師として従事。

 


 

会社の中では光のあたりにくい事務職というバックオフィス業務を支える「プロ」を目指す人を育成したいという岩丸哲哉さんにお話しを伺いました。

 

― 宜しくお願いします。さっそくですが、講師として職業訓練校で登壇されるようになったきっかけをお聞かせください。

岩丸:宜しくお願いいたします。

 

未経験でシステム部へ配属

― 独立される前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

岩丸:某会社のCobol技術者としてプログラミング仕事が最初でした。

 

― エンジニアをされていたのですか?

岩丸:新卒で入社した会社では法務系の業務の募集で入ったのですが、たまたまシステム部に欠員があったため配属されました。学生時代も全くプログラミングに触れたことは無かったので、苦労しました。仕事内容としては主にY2K対応のための作業をしておりました。入社から2000年までシステム部で働き、その後人事異動で総務経理法務のバックオフィスの仕事になったのです。こちらは7~8年ほどやり、会社を退職しています。

 

独立のため社労士資格を取得

 

― 現在の社会保険労務士、行政書士というお仕事に就こうと思ったのはどうしてですか?

岩丸:会社員時代は朝から晩まで働き詰めだったため、少し充電しようと思ってはいたのですが、自己都合退職だったため失業手当が3ヶ月経たないと出ません。ただ、職業訓練校に通えばすぐに失業手当が出るので、3ヶ月間職業訓練校に通うことにしました。もともと会社ではバックオフィスの仕事をしておりましたので、社労士、行政書士の資格を取ることにしたのが始まりですね。

 

― 資格を取った後そのまま独立されたのですか?

岩丸:そうです。それとほぼ同時に講師の仕事も始めました。

 

きっかけは収入安定のため

 

― 講師をしようと思ったきっかけは?

岩丸:独立して開業したのはいいのですが、やはり初めは収入が安定しません。安定収入が欲しくて軌道に乗るまで副業として講師業もやろうと思ったのがきっかけです(笑)。

 

― どのような場所で登壇されたのですか?

岩丸:専門学校と職業訓練校です。どちらかというと職業訓練校の講師の方が肌にあっていたため、専門学校は徐々にフェードアウトしています。職業訓練校の講師は今年で7年目になりますね。

 

― 職業訓練校に来る受講生の最近の傾向は何かありますか?

岩丸:以前に比べて最近の受講生の傾向というものは、私は特に感じることはありませんが、反対に教える側の私自身の気持ちには変化がありました。

 

講師は受講生の人生を左右する職業

 

― 講師経験を積むにつれてご自身の気持ちはどのように変化したのでしょうか?

岩丸:新卒で会社に入った頃は講師をやるとは全く考えておりませんでしたし、講師を始めた頃は安定収入を得て事務所を継続していくことをまずは考えてやっていました。確かにもともと教えるということ自体は嫌いではなかったですし、会社で働いていた頃も法律改正の時や新たな法律ができた時などはセミナーをしたりもしました。でも、自分が講師という仕事をするとは思ってもいませんでした。

ですが、最近は講師というか、教えることは天職のように感じています。極端に言うと、職業訓練校の講師というのは受講された方の人生を左右するものだと思います。そこに関わることができる仕事というのは、責任もある反面、やりがいも非常に感じます。

 

― 職業訓練校と専門学校での講義の違いはどういった所でしょうか?

岩丸:職業訓練校に来る方は年齢層が幅広いのはもちろんですが、それまでの業務経験や立場など本当に人それぞれです。専門学校の場合は全員が同じスタートからでいいのですが、そういう訳にもいきません。その時のクラスによって教え方を変える必要があります。

以前、受講生から質問を受けた時に、私からすると完璧な回答をしたと思ったのですが、どうもその受講生は納得していません。別の受講生が「先生が言っているのはこういう意味だ。」というフォローをするとようやく顔が明るくなりました。そういう失敗を経験しながら日々成長していくんだなと感じました。むしろ私が勉強させられていることの方が多いかもしれませんね(笑)。

 

― 職業訓練校ではどのような講座を持たれているのですか?

岩丸:現在3つの講座を教えています。

さきほど言った簿記などの会計と人事労務、ビジネス法務です。

 

― やはり簿記の人気が高いのでしょうか。

岩丸:はい。簿記は人数が集まりやすいですね。一番入りやすいことと、知名度も他に比べて高いように思います。また、事務職を目指すということで女性も多いですね。簿記の講座の受講者は3分の2くらいが女性です。

 

― 業種を問わず活かせる資格という意識があるかもしれませんね。

岩丸:そうですね。私自身がバックオフィス業務の出身ですので、受講される方には事務職のプロを目指して欲しいと考えています。

 

事務職のプロを目指して欲しい

 

― 講義の時に心がけていることはありますか?

岩丸:先ほども言った通り、「事務職のプロを育てたい」ということです。

全てとは言いませんが、事務職というのは多くの会社で立場を低く見られがちなポジションです。私のいた会社でもそうでしたが、営業の人からすると「事務職は何の利益も出していない、稼いできているのは営業だ」という意識があります。専門性の高い技術者がいる会社では、「この技術がなければ会社は成り立たない」となる訳です。

バックオフィスの仕事というのは、ヒト、カネ、モノ、情報という企業の生命線を管理する部署であるはずです。営業、技術はもちろん大切ですが、同じくらい大切な部署なのです。ですので、事務職にはもっと頑張って欲しい。「この仕事は管轄外だから分からない」と言うのではなく、「この人に聞けば何でも分かる」と言われる人を目指して欲しいですね。

例えば会計の講義をしている時には会計のことだけではなく、法律や労務の事に関しても触れるようにしています。資格を取っただけではなく、それを実務に生かさなければ意味がありません。ただ資格を取るためだけの講義ではなく、私自身の実務経験を踏まえてなるべく包括的な学習をしてもらおうと心がけています。立体的に物事をとらえて欲しいですね。

 

― 簿記の資格取得者は以前と比べて変化はあるのでしょうか?

岩丸:すごく減るとか増えるとかいうことはなく、いつも安定していると思います。いつの時代でもどの会社でも必要な知識ではありますので。社会人としての共通言語が身に付きますし、営業でも数字に強いと説得力はありますよね。

 

「小さな会社の総務経理」をできる人を育てたい

 

― 今までの講義で印象に残っていることがあれば教えてください。

岩丸:「小さな会社の総務経理」という題で講義をした時は印象に残っています。受講者が非常に興味を持って聴講してくれました。小さな会社というのは、総務と経理を一人が担っていることが多いです。ですので、小さな会社で総務経理をやっている人は大企業でも通用します。しかし、大企業の人が小さな会社に来ると意外と仕事ができなかったりする。というのは、大企業では総務と経理が分かれていて、さらにその中でも分業になっている所が多いからです。総務経理の仕事自体は小さな企業でも大きな企業でも基本は変わりません。管理する人数や扱う金額の桁が違うだけです。小さな会社の総務経理ができる人を育てたいと思っています。

 

― 簿記の資格取得には平均的にどのくらいの学習時間が必要なのですか?

岩丸:ある程度3級の知識がある人であれば、2級の学習に150時間ほどあればいいのではないでしょうか。

 

― ゼロベースからまずは3級を目指そうとする人におすすめの勉強法はありますか?

岩丸:書籍などについては書いてあることは同じだと思うので、自分の好みで選べばいいと思います。学習法として私がよく言っているのは「予習はしなくてもいいが、復習を必ずすること」ということです。講義では一回ずつしか触れられないので、自分が解らないことがあればその日のうちに復習して、それでも解らなければ次の講義で必ず質問して欲しいと言っています。簿記は人事労務や法務と比較すると内容の連続性が強いので、どこかで躓くとその先が解らなくなってしまいます。解らないものは解らなくなった時に解決しないと進みません。そこはプログラミングに似ているかもしれません。

 

― 何を勉強するにも復習は大切ということですね。本日はお時間をいただきありがとうございました。

岩丸:こちらこそありがとうございました。

Authors
Top