田中 準志さん~コンピュータは面白い、IT業界で楽しく働く~

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田中 準志 (たなか・じゅんし)

講師になるまでのお仕事: 情報システムの開発、システム監査を経て企業研修の講師を務める。

今のお仕事: human co-education代表。IT講師として数多くの新入社員研修、セキュリティ研修に携わる。

 


 

IT業界の新入社員が楽しく仕事をしていくために、自ら考える力を養う研修を行っているという田中準志さんにお話しを伺いました。

 

― 本日は宜しくお願いいたします。

田中:宜しくお願いします。

 

アルバイト探しが本業に

― まずはIT業界に入られたきっかけを教えてください。

田中:きっかけは、なんとなくです(笑)。

 

― なんとなく(笑)、ですか。

田中:学生時代に夏休みのアルバイトを探していたんです。5月くらいだったと思います。当時の求人情報誌はアルバイトと正社員の求人が一緒になっていました。それを読んでいたら、すごく面白そうな仕事があったのです。それが正社員募集の求人でした。アルバイトではなかったですが受けるのはタダだし、交通費支給と書いてあったのでとりあえず受けてみようと。

そうしたら、たまたま合格したのです。内定をいただき、なるべく早く人を集めたいとのことで、在学中でしたが来ないかと言われました。面白そうな仕事でしたし、どのみち就職するのだから少し早くてもいいだろうということで、大学を中退し、就職してしまいました。だからね、私が社会人なったのは7月なのです。

 

― 珍しいですよね。

田中:その内定をいただいた時の面接は150人くらい受けにきたらしいのです。その中で3人しか合格しなかったというのを聞いて、なんというか、プレミアム感を植え付けられました(笑)。3人しか合格していないというのを聞いたら、やはり入社しなければという気持ちになってしまいまして。

 

― 大学では何の勉強をされていたのですか?

田中:通信工学です。全くITに関係ないというわけではありませんが、パソコンは全然関係ありません。

 

― 入社されてからのお仕事はどのようなことをされたのでしょうか?

田中:COBOLを使った汎用機です。地元、兵庫県の農協さんの為替オンラインシステムを作っていました。

当時はわからないなりに一生懸命作っていました。動き出した後に、先輩に農協で動いているシステムだから見に行ってごらんと言われ、見に行ったんです。でも、実際に動いているところを見ても自分がどの部分を作っているかなんてわかりません。ただ、自分が関わったシステムが世の中で使われているということに感動しました。やはりこの仕事は面白いと感じたことを覚えています。

 

― プログラミング言語はその時のCOBOLが初めてだったのですね。

田中:そうですね。ですが、とても面白かったです。

 

なりゆきで講師に

 

― どういったきっかけで現在のような講師のお仕事をされるようになったのですか?

田中:何年か務めた後に転職をしました。その会社には開発部門と教育部門と監査部門という3つの部門があり、その会社で開発の仕事をしていました。

1999年に京都の宇治市で住民情報漏えい事件があったのはご存知ですか?事件後に宇治市のシステム監査を受注することができたのです。当時の監査部門には監査専門の方は何人かいたのですが、システムに詳しい人がいませんでした。そこで、たまたま開発の仕事で区切りのよかった私が駆り出されました。

そこから開発を離れ、システム監査とセキュリティ監査の仕事をさせていただくようになりました。ある年の3月の終わり頃、教育部門で新入社員研修の講師が足りないという話が出ました。某F社系の講師は沢山いたのですが、某I社系の機械が使える講師がいないというのです。それが、私が転職前に使っていた機械だったのです。突然、「某I社系の機械使えるよね?」と言われ「使えますよ。」と言ったところ、なぜか4月から講師をやることになってしまいました。

 

― 講師になったのは人が足りなかったから、ですね(笑)。

田中:そうなんです(笑)。もともと、IT業界にどうしても入りたかったわけではなく、監査をやるとも考えていなかったです。更に講師をやるとは全く思っていませんでした。本当に、なりゆきで今まで来ています。

 

― 講師になってからはどのような研修が多かったのですか?

田中:会社にいた頃は、監査部門と講師を掛け持ちしていました。IT系は新入社員研修、や要件定義から設計・製造・試験まで、それ以外ではセキュリティ系の研修を行っていました。監査人の育成や、ISMSの審査員を養成するための研修です。またプライバシーマークのコンサルティングなどもさせていただきました。プライバシーマークやISMSがちょうど話題になっている頃で、その認証を取りたいというお客様がたくさんいらっしゃいました。

 

― 外部の企業向けの研修ですか?

田中: そうです。外部企業向けがほとんどでした。

なりゆきで講師になったとはいえ、新入社員研修をさせていただくからには責任は重大です。入社して1年目の方々が、初めて社会に出て、自分たちはこの世界でやっていけるのかと不安に思っているわけです。その時に教える側というのは、本当にこれからの社会人人生を左右します。なので、本当に一生懸命取り組みました。お客様から高い評価をいただいて、来年も、来年もとさせていただいているうちに仕事の割合がどんどん講師の方に傾いていきました。

 

自分のやり方を貫く

 

― 講師としてお仕事が増えて独立を考えられたのですか?

田中:それもまた色々あります(笑)。

私は開発から監査、教育と部門を渡り歩いていますが、講師になった当初は突然でしたし、やはりやり方などはよくわかりません。とりあえず自分が思うままに一生懸命やっていました。私の教え方というのは、テキストに書いてあることと言うよりは開発現場で培った経験や自分の思いを伝えることに重点を置いています。テキストはあくまで参考書と考えています。ただテキストを読み進めるだけというのは家でもできますから。

最初はその教え方を周囲から批判されていました。まさにバッシングの嵐でした(笑)。ですが、私は元々講師をやりたいと思っていたわけではなかったので「嫌だったら下ろしてくれればいい。」という気持ちで自分のやり方を貫きました。しばらくしてお客様から高い評価をいただくようになると、今まで物凄い批判をしていた周囲が手のひらを返したように、「田中の真似をしろ。」と言うようになりました。出る杭は打たれると言いますが、出すぎると見上げてもらえるということを教えていただきました(笑)。

会社組織はしがらみが多いですので、もっと自由に自分の思うままに仕事がしたいと考え、独立を決めました。

 

― 独立してからはどのくらい経つのでしょうか?

田中:2010年に独立したので、5年目になります。

 

― お仕事の依頼はどういったものが多いですか?

田中:春は新入社員研修ですね。それ以外の時期もIT系の研修が多いです。言語研修ではなく技術者育成が多いですね。要件定義、設計の仕方、テストの進め方、見積もりの仕方といったものです。それとセキュリティ系の研修のお話しもいただきます。セキュリティの取り組み方や、監査の仕方、PDCAの考え方といったものですね。

 

草食系新入社員

 

― 独立される前から研修をずっとされていて、以前の受講生と現在の受講生で大きく違うところはありますか?

田中:一番大きく違うのは男性が大人しくなったという印象を受けます。大人数での研修だとクラス分けをしますよね。以前は、男性が他クラスの女性を見て回っていました。今はどちらかというと女性が他クラスを見て回っています。

講義をしていても、活発に質問をするのは女性の方が多いです。更に言うと、講師への評価が厳しいのも女性です。

 

― 女性の割合が増えているというのはありますか?

田中:それはあまり変わらないと思います。この業界は昔から男性の方が割合は多いのですが、女性も一定人数いました。今もそれは変わっていないのですが、女性がどんどん積極的になっているように感じます。逆に言うと、男性が大人しくなっているのかもしれません。

 

― 男性が大人しくなったというのは何か原因はあるのでしょうか?

田中:なぜ大人しいのかはわからないですね。ただ、こちらがレールを敷かないと動けない受講生が増えたというのはすごく感じます。何か質問を投げても、「わかる」か「わからない」しかないのです。まず考えて、「こうじゃないですか」というのが出てきません。知っていれば答える、知らなければ答えない。間違えるのが恥ずかしい、嫌だと感じているようです。

新入社員研修だと項目ごとに確認テストがあることが多いですが、そういうテストの点にはこだわりたい、自分を良く見せたいと考えている人が多いように感じます。途中のやり方はどうでもいい、テストに出るところだけ分かって、良い点が取れればいいという人が考えている人が増えている印象を受けます。

 

― 点だけ取れればいいというのは現場では通用しないのでは?

田中:現場ではだめだと思います。私も現場にいた人間ですので、ただやり方を覚えるのではなく、なぜそうなるのかという理由、理屈を理解してほしいと思っています。研修もできるだけその方向性でやっています。

例えば、コンピュータは足し算しかしません。割り算、掛け算、引き算はせず、1と0の組み合わせで、引き算も足し算で計算します。そのやり方はみんな覚えて知っているのですが、なぜそうやったら答えが出るのかの理由を考える人が少ない。そこが私は気になっています。ただ覚えているだけでは忘れてしまうし、応用がききません。

時計を見た時に、なぜ時計は右回りで動いているか不思議に思ったことはありますか?男性と女性の服のボタンの位置が違うのはどうしてでしょうか?そういう疑問を持つ人が非常に少なくなっています。

 

理屈、仕組みを考えて仕事を楽しく

 

― 日常生活にも疑問を持った方がいいということですね。

田中:そうですね。「こういう物だ」と思ってしまっていることが多いのだと思います。なぜそうなるのかという理屈が分かるようになってくると、コンピュータの仕組みやプログラミングにどんどん興味が湧いてきます。つまり、ITエンジニアにとっては仕事が面白くなるということです。

新人研修は大体が1~2ヶ月です。その間に全ての技術を教えるのは無理ですし、受講生も覚えられるわけではありません。IT技術は日々進歩しているので勉強もずっと続けなければなりません。ですので、新入社員研修では「プログラミングって面白い」「コンピュータって面白い」という気持ちを持って貰えるように講義をしています。面白いと思えば、後から自分で勉強したり調べたりをいくらでもしていただけますので。

私も普段、あれ?と少しでも思ったことがあればすぐに調べます。

 

― 今はすぐに調べるというのがいくらでもできますね。コードもインターネット上にたくさんあります。

田中:そうですね。それを信用するかしないかは自分次第ですが、キーワードを叩けば何かしらが出てきます。出てきたものをヒントにして更に調べるということを繰り返せばいいのです。

それすらしない方がたくさんいます。敷かれたレールの上で「これと、これとこれを覚えておいてね」と言われたものしか覚えない。暗記は得意ですが応用はききません。やり方や見方が少し変わるとできなくなってしまうんです。学校の勉強がテキスト通りに進むものが多かったからかも知れません。テキスト通りにやらないと混乱してしまう受講生もいます。ですので最近の授業では、ある程度進んだ後、「今言ったことはテキストだとここに書いてあることです。」という結び付けと振り返りを必ず行うことにしています。

 

― 理由が大切ということですね。

田中:「あなたのことが嫌い」と言われても、どこを嫌いになったのかという理由を知りたいでしょう。「なんとなく」と言われても納得できませんよね(笑)。それと同じです。

 

― そうですね(笑)。最後に今後の展望を教えてください。

田中:IT業界はどんどん新しい技術がたくさん出てきます。ただ、コンピュータ自体は変わりません。どういう仕組みで動いていて、どうやって指示を出すとどのように動作するのか、という根本的な部分が分かればプログラミング言語は言葉が違うだけで理屈は一緒です。その根本を勉強できるような研修、コンピュータが面白いと思える研修をしていきたいと考えています。

 

― ありがとうございます。日常生活にも疑問を持ってみようと思います。

田中:ありがとうございました。

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